【読書日記13】生命保険のカラクリ

本日はライフネット生命副社長の岩瀬大輔さんによる「生保のカラクリ」をご紹介します。

生命保険のカラクリ (文春新書)

生命保険のカラクリ (文春新書)

著者の岩瀬さんについては以前もご紹介したので、こちらをご参照願います。

生命保険は日本人にとっては非常になじみのある金融商品である一方で、その実態は一般人にはあまりよく把握されていません。保険で集められたお金はどのように運用されているのか、予定利率はどのように決定・達成されているのか、結局のどの保険が得なのか、など保険にかかわる謎は非常に多いです。

私が勤めている会社にも生保レディが保険の勧誘をしに来ているのですが、正直毎回プランを見せられてもそれが得なのそして本当に必要なのか何回聞いてもわかりませんでした。しかし、この本を読んだことで生保の仕組みがわかり、自分にあった保険はいったいどういうものが自分で考えることが出来るようになりました。

本書では、司法試験、外資系コンサル、外資系ファンド、ハーバードMBA、ネット生保設立というキャリアを歩んできた、理論にも実務にも長けている岩瀬大輔さんが、複雑な保険のカラクリを非常に丁寧に解説しています。また岩瀬さんご自身もネット生保を立ち上げるに際して、ゼロから保険を勉強したいうこともあって、生保のフレームワークをご自身の言葉で解釈し直し、一般人でも知識ゼロから生保のカラクリをわかるように書かれています。

複雑な生保の仕組みをここですべて解説することはできませんが、生保の仕組みを理解するに際して少なくとも以下のことは押さえておくべきです。

現代の生命保険は「保障」と「貯蓄」というまったく異なる二つの機能を内包している。

「保障」は契約者からお金を集めてプールし、事故などが起きたときに、プールしたお金から保険金を支払うというものです。ということは、仮に保険料を支払った契約者が将来的に事故にあわなくなったとしても、それは必ずしも無駄金になっているわけではなく、きちんと事故にあった人に支払われて、有効に使われているのです。

一般的には「保険料が掛け捨てになるのは損」と考えられてます。しかしながら、保険のそもそもの機能を考えれば、決して掛け捨ては損ではなく、むしろ保険の本質的な役割といえます。

一方、もう一つの「貯蓄」はどうでしょうか。「貯蓄」は満期時に受け取る保険満期金や、解約したときに戻ってくる返戻金などがあります。「保障」の説明をしたすぐ後なので、わかりやすいと思いますが、この「貯蓄」という機能は別に保険会社でなくとも提供することが出来ます。銀行や証券会社で金融商品を買えば代替できる機能なのです。

ですが「せっかく支払った保険料が一円も戻ってこないのは悲しい」という感情論に走ると、保険特有の本来の機能ではない「貯蓄」にも目がいき、「60歳になったら500万円支払われる」といった養老保険を購入してしまいがちです。出来上がりの利回りもよくわからず、満期になったら自分が払い込んだ保険料のいくらかもらえるだけで得と感じてしまうのは、日本人が保険のカラクリをきちんと理解する機会がなかったからだといえます。

上記以外にも、「定期死亡保険のコスト構造」、「保険会社をゼロから作るとどうなるか」、「大手生保と外資系生保の保険料収入の推移」、「保険にかしこく入るための7か条」など目からうろこの内容が満載です。

私自身数これまで多くの生保レディの勧誘を受けてきたにもかかわらず保険の知識はまったく身につきませんでした、この1冊を読むことで保険に関する疑問はほぼすべて解消されました。機関投資家としての生保の金融における役割をしるためにも、また人生でマイホームの次に大きな買い物といわれる保険の加入を決めるためにも、本書は間違いなく有益な一冊です。