全国銀行2008年9末不良債権額発表 実感とのズレ

2月10日に金融庁から不良債権(金融再生法開示債権)の状況が発表されました。
2008年9月末の不良債権額は12.2兆円で、前回の2008年3月から0.9兆円の増加となりました。

このフローで0.9兆円の増加、ストックで12.2兆円という不良債権は果たして多いのでしょうか。それとも少ないのでしょうか。

金融機関で働き、また企業のクレジットを見る仕事している立場からすると、この金額額は想像よりも全然少なく、バブル崩壊後の金融機関のように、隠れた不良債権はまだまだあると思われます。

一つ目の理由は、現在の不況を鑑み、また過去の不良債権の額と比較するととまだまだ不良債権の額が少なすぎるからです。
不良債権が最も多かった2002年3月期の不良債権額は約43兆円でした。以下時系列で追っていくと不良債権額は以下の通りです。(金融再生法、全国銀行)

  • 2002年3月期 約43兆円
  • 2004年3月期 約26兆円
  • 2006年3月期 約13兆円
  • 2008年3月期 約11.4兆円
  • 2008年9月期 約12.2兆円

今から景気の回復が始まったいわれる6年前の2002年は不良債権額が最も多い時期でその額はなんと43兆円です。現在のサブプライムショックによる証券化商品の全世界での不良債権IMFの試算によると約140兆円なので、この大きさの凄さがわかります。

翻って「100年に一度の金融危機」といわれる現在、2008年9末の不良債権額はたったの12.2兆円です。前回からはわずか0.9兆円の増加。金融機関で働いている実感する不良債権の多さと実感が全然違います。

二つ目の理由は、2008年4月から6月にかけて多く大企業が倒産したにも関わらず、それにしては不良債権の額が増えていないということです。具体的には以下があげられます。

2008年4月から6月に倒産した負債総額が多い会社をとりあえず並べてみました。不動産・建設に偏っているとはいえ、これほどの大型倒産が相次いでいるのです。実際に上記の倒産は、業務をしていく中で、影響の大きさをひしひしと感じました。それにもかかわらず、不良債権の増加額が2008年3月から2008年9月にかけてわずか0.9兆円、ストックでは2年前よりも少ないという状況はやはり違和感を覚えます。現在公表されている不良債権額は実際の残高の氷山の一角と考えることが出来るのではないでしょうか。