日本経済の不況の原因は何か3〜円安バブルの崩壊〜

日経のニュースによると、民間エコノミストによる2008年10―12月期の実質経済成長率予測は平均で前期比年率10.59%減と、1月調査の5.14%減を大きく下回っている状況です。もうこの不況は戦後最大規模といっても過言ではないでしょう。そして、「金融危機の影響が日本に飛び火し、日本も不況になった」という従来の定説ではもう間違いなく説明がつかなくなっている状況です。

前回のブログでは、現在の日本の不況の原因の理由として「円安バブル崩壊」と「(日本の)不動産バブル崩壊」という仮説を立てました。今回からはこのことを詳細に見ていきましょう。

まず円安バブルの崩壊についてです。このことについては、早稲田大教授の野口悠紀雄先生や元財務官でミスター円の異名を持つ榊原英資氏が指摘しています。今回のリーマンショック以後の世界不況関連の本で、日本経済の不況を一番懸念しているのが野口先生の「円安バブル崩壊」論です。以下、野口先生著の「世界経済危機 日本の罪と罰」から引用です。

日本でもバブルが発生していたのだ。それは、わかりにくい形で生じていたために、バブルであったこと自体が明確に意思されていない。それは異常な円安である。そしてその崩壊が日本経済に影響を与えつつあるのだ。

2002年以降の戦後最長の景気拡大に関して、一般的には小泉・竹中政策の不良債権処理及び構造改革の功績と考えられていました。しかし、野口先生は景気回復は小泉・竹中政策によるものではなく、円安バブルによるものだとしています。すなわち、構造改革などは行われていなく日本経済は古い状態のままで、異常な円安と対米輸出の増加により日本の景気は回復したというのです。なお、対米輸出を支えていたのは、米国の過剰消費としています。この景気回復は持続可能でない上記二つの異常な条件によって実現したものであり、いずれは壊れるべき性質のものだったと指摘しています。

そして、サブプライム及びリーマンショックで北米の需要が冷え込み、日本の景気拡大を牽引していた対米輸出の減少が起こり、また金融危機の結果ドルが売られ相対的に円が高くなってしまった結果、円安バブルは崩壊し、日本の輸出主導の経済モデルは崩壊したというのです。確かに日本経済のけん引役だった自動車や電機など製造業の企業業績が総崩れ状態のニュース及びGDPの急激な減少をみていると、この指摘は非常に説得力があるといえます。

また野口先生は、今回の世界不況の問題は「マクロ経済の歪み」であり、日本はその中心位置しているので、今後の深刻な景気後退は不可避としています。すなわち、今回の金融危機対岸の火事どころか、まさに一番影響を受けている国のひとつだということです。ここで「マクロ経済の歪み」とはアメリカの異常な経常収支赤字のことです。このアメリカの異常な経常収支赤字に日本も協力したということで、今回の世界不況は、主犯アメリカ、共犯者日本としています。だからサブタイトルが「日本の罪と罰」となっているのです。
なお、2月14日号の週刊東洋経済において慶応大の池尾和人先生も今回の世界不況の基本構図は「2000年以降、急激に拡大した国際的な経常収支の不均衡が持続不可能な規模に達したこと」にあるとしています。

続きは次回です。

世界経済危機 日本の罪と罰

世界経済危機 日本の罪と罰