日本経済の不況の原因は何か14〜地価下落の兆候が鮮明に〜
前回まで為替の話をずっとしてきましたが、今週に不動産に関する重大なニュースが二つあったので、そちらをご紹介したいと思います。
一つ目のニュースは、国土交通省が24日発表した地価動向によるものであり、1月1日時点の主要150地点の地価は3カ月前と比べほぼ全地点にあたる148地点(98.6%)で下落したというものです。二つ目のニュースは、商工ローンのSFCGが民事再生を申請したことについてです。
この二つのニュースから何がわかるのでしょうか。
以前に書いたように、日本経済が不況に陥った原因のひとつとして「日本の不動産バブルの崩壊」があると、私は考えています。
他方、世間ではアメリカで住宅バブルが崩壊していたことを認識している人は多い一方で、日本で2004年頃から不動産バブルが発生し、そのバブルが破裂したことを認識している人は不動産業界及び金融機関で働いている人以外あまりいません。事実、これまでに紹介してきた本やサイドバーで紹介している本の著者である有名経済学者、エコノミストである榊原英資、野口悠紀雄、リチャード・クー、高橋洋一、水野和男、岩田喜久男、伊藤元重ら各氏は、「近年日本の不動産バブルが崩壊した」ということにはまったく触れていません。日本の不動産について触れている場合でも、地価公示価格を引用し、「2007年から少し不動産価格が上昇している」という指摘をしているぐらいです。また、日経新聞朝刊に掲載されているここ1年程の「経済教室」を集めた「日経経済教室セレクション」においても、幅広い分野の論点が網羅されているにもかかわらず、「日本の不動産」に関する問題はまったく出てきていません。
このように日本で不動産バブルが発生した点に関して、経済学者・エコノミストと不動産投資や不動産ファイナンスに従事している実務家との間での認識は大きく乖離しています。
しかしながら、実際には今回ご紹介したニュースにあるように、遅効性がある不動産の地価動向ですら、すでに不動産価格の下落が数字として現れています。さらに、不動産担保融資を多く行っていたSFCGが民事再生を申請した*1ということは、不動産を裏づけとした不良債権が大量に発生しているということも容易に想像できます。なぜならば、不良債権を金融機関が多く抱えるということは、その背後に企業の経営悪化や倒産があるはずですが、そのことは以前ご紹介したように多数の不動産会社の倒産という形ですでに数字に表れているからです。
つまり、「不動産会社の倒産→不動産地価指標の発表→金融機関の倒産」という時間軸で不動産バブル崩壊の影響が分かってきたのです。そして、すでにSFCGが民事再生を申請しているということは、不動産会社の倒産及び地価下落の影響が金融機関の債権にまでに影響が来ているという事であり、まさに日本の不動産バブル崩壊の影響が、日本経済を蝕んでいる状態だといえます。
最初の質問に戻るならば、今週のこの二つのニュースにより、日本の不動産バブルの崩壊が、地価動向の下落及びSFCGの倒産という形で現実のニュースでも表面化してきているということがわかります。現在出ているサブプライム・リーマン関連の本では、一部の本を除いてほとんど「日本の不動産バブル」について書かれていません。今回のニュースを機に、多くの経済学者やエコノミストが、今まで以上に日本の不動産市場の悪化に対して目を向けて欲しいと思う次第です。そうしなければ、日本経済に対する処方箋も誤る可能性が大きくなるからです。
<参考文献>
- 作者: 日本経済新聞社
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2008/12/01
- メディア: 単行本
- クリック: 20回
- この商品を含むブログ (5件) を見る