読書日記3「14歳からの世界金融危機」

本日は「週刊こどもニュース」でも有名な池上彰さん著の「45分でわかる14歳からの世界金融危機」をご紹介したいと思います。

45分でわかる! 14歳からの世界金融危機 (45 MINUTES SERIES 1)

45分でわかる! 14歳からの世界金融危機 (45 MINUTES SERIES 1)

「今の世界金融危機を14歳に説明できますか。」これは、かなりの至難の業であることは間違いありません。大学・大学院の時と、塾の講師のバイトをしていたので、そのとき教えていた中2を想定して、今の金融危機の解説をシミュレーションしてみましたが、どうしても専門用語を使って説明していたり、金融のロジックを一から解説し無駄に長くなったりと、上手く説明することが出来ませんでした。

タイトルからもわかるように14歳からでも読める世界金融危機の本として100ページにも満たないページ数で書かれている本書ですが、これが本当にわかりやい。「こういう風に説明すればいいのか」と非常に参考になりました。他にも池上さんの本は読みましたが、今回はテーマが金融危機という複雑な現象だけに、わかりやすさがより際立っています。

わかりやすさの理由の1つとしては、難しい専門用語をイメージしやすい言葉で解説している点が挙げられます。例えば、CDOを「パッケージ商品」、CDOスクエアード(本書にはこの言葉は出てきませんが)を「トリプルAという保証がついた福袋」という風にです。また解説でも「福袋を販売しているのが大手デパート(投資銀行)なら、大手デパートは変なブランドはうるはずがないという信頼があります」であったり、「『福袋』だと思っていたら、実は『闇鍋』だったのです」というように、難しい金融商品投資銀行の行動をわかりやすいイメージで記述しています。

本書では複雑な金融危機を本書ではサブプライムから始まり、ノンリコースローン、不動産バブル、投資銀行証券化原油価格の高騰及び下落、リーマン破綻、自動車産業のの失速、金融機関への公的資金の注入といった大事なキーワードは外さずに、複雑に絡み合った糸を紐解くように実にわかりやすく解説しています。さらに「リスクを他人に押し付ける」といった強欲資本主義の考えにも言及しています。この1冊を読めば、100年に一度の金融危機をたった45分でざっとレビューできるといっても過言ではありません。リーマン破綻から半年も経ったいまだからこそ、金融危機の原因を再度復習する意味でも読んでいただきたい1冊です。

以下、気になった箇所の引用です。

  • 上司に追及されたら、「だって、格付け会社がトリプルAをつけていたましたから、安全だと思いました」と言い訳が出来ますね。トリプルAになっているから安心して買えたのです。
  • 金融危機から株価が暴落したことで、投機資金は原油先物市場、そして穀物先物市場に流れ込み、国際的な価格上昇をもたらしました。
  • アイスランドでも同じことが起きました。こちらでも「円建てで住宅ローンを借りませんか?」といわれて、「はいはい」と言われる通りにやっていたら、「円高になったので返済額が増えました」と言われて、びっくり仰天。
  • 大手企業がお金を借りに来るようになれば、地方銀行にしてみれば、地元にある中小企業にお金を貸すよりは、東京に本社のある大手企業にお金を貸したほうがいいということになるでしょう。結果的に、これからは地方の銀行が地元の会社にお金を貸してくれなくなる可能性があります。そういう悪循環がこれから起きる可能性があります。