日本経済の不況の原因は何か18〜よい円安、悪い円高?〜

前々回では、急激な円高は円キャリートレードの巻き戻しであると述べました。そうこう言っているうちに、ここ1ヶ月ほど、1ドル100円近くまで売られ円安になり、先週また円が買われ、一時1ドル93円までの円高になりました。円安になったり、円高になったりと激しく為替相場は動いていますが、日本にとってはどのような為替の状態がいいのでしょうか。一般的には、輸出が強い企業が多いに日本にとっては、円安の方が有利といわれています。しかし、榊原英資氏が「強い円は国益」というように、円高は必ずしも悪いものではないという論者もいます。そこで、円安、円高についてそれぞれ「よい」「悪い」で場合わけをして考えてみたいと思います。

1.よい円安
アメリカの景気が絶好調でドル高になり、結果として円安になる状態。アメリカの景気がいいことで、日本のアメリカへの輸出からその恩恵を受け、日本も景気がよくなる場合が多いです。また2000年代は日本がゼロ金利政策及び量的緩和を実施していた為、日米金利差から円安にも触れました。日本経済にとって一番都合のよい円安の状態。
EX)2005年〜2006年の景気回復期の日本がまさにこの状態でした。



2.悪い円安
日本が抱える800兆円以上の財政赤字少子高齢化問題、また政治不信などにより日本の国力が衰えているという判断から、円が売られるような状況。このような状態では、為替では円が売られ、国内株式では外国人投資家に株が売られ、また場合によっては国債も売られること*1から、いわゆる「トリプル安(円安、株安、債券安)」になります。まさに日本からマネーが逃げている状態です。
EX)1ドル135円まで売られた2002年初など。



3.よい円高
日本の景気が好調で、世界中の人々が日本に投資をしようとして日本円を買っている状況。このような場合は、日本株も上がっていることが多く株式投資向けの円高です。このような場合は内需株が買われることが多いです。また円高から輸入企業にとってもプラスになります。(ただし、円高により安い外国製品が国内に流通することで、打撃を受ける国内業者もいます。)
EX)ITバブル絶頂期の1999年末や日本が本格的に景気回復していった2005年始めの円高等。



4.悪い円高
アメリカの景気が落ち込んで、それを悲観した世界の投資家がいっせいにドルを売ったせいで、ドル安となり、円が高くなっている状況。またアメリカの景気が悪化することで、FRBが利下げを実施、その結果、日米金利差が縮小することで、円高になる状況。アメリカの景気が落ち込むことで、アメリカへの輸出で利益を得ている企業の業績も悪化し、結果日本の株は売られることとなる可能性が高いです。
EX)サブプライムショック及びリーマンショック後の急激な円高など、まさに今の状況です。



2006年から2008年にかけては、1から4へ、すなわちよい円安から一気に悪い円高へと転換した時期でした。よい円安と悪い円高の背後にはアメリカ経済の存在が大きいことがわかります。

以上、日本経済にとっていい、悪いそれぞれの円安/円高についてでした。

<参考文献>

儲かる世界経済―マンガと英語でみるみるわかる!

儲かる世界経済―マンガと英語でみるみるわかる!

「お金の仕組み」という本で紹介されていたので、読んでみたところ、思った以上にわかりやすくて驚きました。ページの半分はマンガでかかれているので、経済の動きもイメージもしやすいです。

*1:安全資産へマネーが移ることで、国債が買われるという状況も起こりえます。