邦銀の収益体質を考える②

前回の続きで邦銀の収益体質についてです。銀行の収益源は主に以下3つでした。

  1. 預金金利と貸出金利のスプレッド
  2. 金融商品・サービス提供による手数料
  3. 金融資産の保有・売買から得られる収益


邦銀は収益力を強化するために、上記2に力を入れていきました。しかしながら、これらのフィービジネスの先駆者である欧米の投資銀行はすでに2が儲からなくなってきていることを1990年代の終わりには気づいていました。そこでどうしたのか。おなじみの3のプリンシパル投資ビジネスへの傾倒です。具体的にはレバレッジをかけた自己資金での投資です。さらに2と3を組み合わせて、証券化商品を組成し、フィーでも儲かり、自己投資でも儲かる仕組みを作り上げたのです。

一見完璧な上記のビジネスモデルですが、ハイレバレッジとオフバランスによる証券化モラルハザードを引き起こし、サブプライム問題・リーマンショックへと発展していってしまいました。投資銀行のビジネスモデルについては例えば以下で詳しく書かれています。

投資銀行バブルの終焉

投資銀行バブルの終焉

邦銀は欧米の金融機関に半周遅れで、2と3に力を入れていきましたが、追いつく前にトップを走っていた欧米の金融機関がこけた状態です。

では、邦銀はどうすればよいのか。収益を上げるために、1を強化することが重要になることは間違いありません。ですが、ただスプレッドをあげるだけでは何の解決にもならないはずです。なぜならば、スプレッドをあげたとしても、それはただ単に企業から銀行へ収益が流れるだけであり、まったくもって新たな何かが創造されているわけではないからです。

スプレッドをあげるだけではたこがお腹がすいて自分の足を食べるようなものです。銀行が収益を増やすためにスプレッドをあげたとしても、その結果、企業の収益力が厳しくなり、不良債権が生まれる温床になってしまうからです。

1、2、3以外で収益を上げるビジネスモデルを作るために個人的に必要だと思っていることは、「新たな金融システムの構築」です。
1990年代までは日本の金融システムは間接金融優位の金融システムでした。その中でも主たる金融の役割を担っていたのが、メインバンク制であり株式の持合です。その後、メインバンク制中心の金融システムから欧米型の直接金融、市場型間接金融中心の金融システムへの移行を試みましたが、サブプライムショックの影響により現在は欧米型の金融システムの弱点が露呈した状況です。

最近ではメインバンク制や株式持合いが一部では復活しているとのニュースもあります。今後、邦銀が収益力を高めるためには、時代に適応した新たなメインバンク制のあり方が必要になると個人的には思っております。

ちなみに私が6年前に大学院に出願した際の研究計画書のテーマはまさに「日本型金融システムのあり方」についてでした。今読むと、分析が甘くよく合格したなという感じです…。(面接では案の定ぼこぼこに突っ込まれました(苦笑)。)

私が研究計画書を書いた当時は日本の金融システムは間接金融から直接金融(市場型間接金融)へ移行すべきという議論が非常に活発に行われていましたが、6年経った今、投資銀行のビジネスモデルもほぼ崩壊し、日本の金融システムの構築もまたゼロからのスタートになってしまった感があります。むしろ株式持合いやメインバンクがまた復活してきていることは、当時からすれば不思議な感じもします。

少しが長くなりましたが、邦銀の収益体質については今回で終わりとなります。