セミナー2「田中直毅氏講演 レモンとピーチから今後の金融のあり方を考える①」

先日、不動産証券化協会主催の第4回ARESマスターコンベンションに参加してきましたので、内容を軽くレビュー致します。

途中からしか参加できなかったのですが、その中でも国際公共政策研究センター理事長であり、経済評論家でもある田中直毅氏の講演が興味深かったです。

ただ、「金融不況の真因と課題」という壮大なテーマだったにも関わらず、レジュメもなく、パワーポイントも使わず、ひたすら1時間半金融危機の課題について話すというものだったためか、1000人以上いる会場の多くの人はポカンとしている感じでした。話は非常に面白いのですが、大スクリーンに1時間半ずっと田中氏の顔が映り続けているだけで、不動産とはあまり関係のないマクロプルーデンシャル政策といった抽象的な話が延々と続くと、マクロ経済に興味のある人以外は確かにピンと来ないとは思いますが…。

本題に入ります。タイトルにある「レモン」と「ピーチ」ですが、田中氏の話では、今後の金融収益の在り方のキーワードが「『レモン』から『ピーチ』に変わること」とのことでした。一体どういうことでしょうか。

レモンは皮が厚く、中身の状況はまったくわかりません。レモンのように中が腐っているのかわからない、すなわち金融商品でいうならば、複雑なストラクチャーにより中身がブラックボックスになっており、情報の非対称性が存在しているものを田中氏はレモンと例えました。サブプライムが組み込まれたCDOCDOスクエアード、CDOキューブなどはまさにレモンといえます。

他方、ピーチは状態が悪くなると、外からでもすぐにわかります。すなわち、ピーチは中身がよくわかる透明性のある金融商品に例えられています。

レモンには情報の非対称性が存在しますが、だからこそリスクプレミアムが存在し、ハイリターンを得られる可能性があります。田中氏が指摘していたことは、「情報の非対称性を収益源にするような『レモン』ばかりが出回るのではなく、透明性のある『ピーチ』な金融商品が流通する市場を形成する必要がある」ということでした。

今回の金融危機では多くの投資家がレモンを掴みすっぱい思いをしました。すっぱいのはもうこりごりということで、今後はリスク管理上もピーチのような金融商品が好まれるようになると予想されます。

一方で、ピーチのような金融商品とはいったいどのようなものでしょうか。ピーチのような透明性のある金融商品が望ましいのは間違いないですが、以前ご紹介した「経済を動かす単純な論理」でも書かれているように、そもそも金融商品のリスクの計測自体が非常に困難です。CDOのような複雑な金融商品を評価することの難しさはもちろんのこと、比較的ストラクチャーが単純なプレーンな金融商品でさえ、実はリスク評価が難しいと個人的には思っております。

この点について講演会の終わりの懇親会にて田中氏に直接質問いたしました。続きは次回です。