セミナー2「田中直毅氏講演 レモンとピーチから今後の金融のあり方を考える②」

前回の続きです。田中氏に対する私の質問の趣旨は以下の通りです。

「貴重なお話ありがとうございました。レモンとピーチについてのお話が非常に興味深かったです。今後はピーチのような金融商品が出回る必要があるというのは、まったくの同感です。今回のサブプライム問題も原因の一つとして、レモンに対するミスプライシングが大きかったように思います。

一方で、ピーチの評価も実は難しいのではないかという疑問も実務をする上で、感じております。例えば、裏づけ不動産が一つのみの非常に単純なノンリコースローンを想定します。この場合、レンダーは契約書関連も不動産が生み出す収益も完全に把握することが出きる状況です。しかもノンリコースローンなので、収益の源泉は非常に明確であり、レンダーはAMからもらうAMレポートにより、常に不動産の現況を把握できる位置にいます。これはピーチな金融商品といっていいと思います。

これを束ねてCMBSにして売却する際には、プライシングは複雑になると思いますが、ノンリコースローン1本だけをみるなら、それほど複雑ではありません。

ですが、裏付けの不動産に依拠している単純なノンリコースローンでさえも、現実問題として、プライシングは非常に難しくなります。レンダーからすれば完璧に透明性は確保できているのですが、場合によっては元本が傷つく可能性があります。

実際、ノンリコースローンがデフォルトし、元本全額回収できなくなってきているケースが最近出てきています。例えるならば、目の前でピーチがくさっているのを傍観するしか出きない状況です。 

ピーチのような金融商品が増えることは必要だとは思いますが、透明性があっても、腐るときは腐りますし、それに対する手当てが別途必要だと思います。この点について、お考えをお聞かせ願います。」

田中氏の答えを期待していたのですが、その直後他の人がいらっしゃいまして、話がながれてしまいました。最後に「北村さん※と会うことはあるかね。今度会ったら、宜しく言っていてください。それでは、頑張ってください。失礼します。」とだけおっしゃって去っていきました。

※私の大学院時代の指導教官です。
ということで、残念ながら田中氏の考えを引き出すことは出来ませんでした。田中氏の答えはわかりませんでしたが、自分なりの問題意識は発見できたので、このことに対する回答を今後自分なりに考えて行きたいと思います。