個人投資家は、市場よりリターンを上げることが出来るのか?

円キャリートレードのことを書いた際に、FXで儲けた個人投資家は、どこに行ってしまったのか、ということについて述べました。確かに中にはFXで大儲けしたまま勝ち逃げ出来た人もいるでしょう。他方、投資したお金をすべて失った人も中にはいるはずです。でも、それは個人投資家だけでなく、プロのディーラーも同じことです。では、投資において平均的には個人投資家は市場よりもリターンを上げることが出来るのでしょうか。

名著「ウォール街のランダム・ウォーカー」の原著第9版では、新たに行動ファイナンスについての章が設けられています。そして、行動ファイナンスの視点から個人投資家の投資によるリターンに対して厳しい評価を下しています。以下、引用です。

経済史家のチャールズ・キンドバーガーが述べたように、親しい友人が自分より金持ちになることほど、心をかき乱して判断を狂わせるものはないのだ。そして『根拠なき熱狂』を著したロバート・シラーは、「このプロセスは『ポジティブ・フィードバック(順張り投資)の回路』を通して、自己増殖する」と指摘している。株価が上がり始めると、より多くの投資家がゲームに参加し、そのことによって多くの投資家が潤い、ますます多くの投資家を惹きつけることになる。

(中略)
こうした集団行動結果は、個人投資家に対して壊滅的な打撃をもたらすことになる。確かに株式市場は長期的には高いリターンをもたらしてきたが、実際に平均的な個人投資家が手にしたリターンは、それを大幅に下回るものにとどまるのだ。それというのも、投資家は熱狂的なブームで相場がピークに差しかかる頃に、本格的に投資信託を購入する傾向が強いからだ。

(中略)
ダルバー・アソシエイツの調べによれば、この売買タイミングの選択の間違いのせいで、平均的な個人投資家が手にするリターンは、市場インデックス・ファンドをずっと保有している場合に比べて5%は低くなっていると考えられる。

なんと、市場インデックスを保有し続けるよりも、個人投資家のリターンは5%も低くなっているというのです。投資において、通常年リターンで5%で回せば、けっこういいほうです。仮に市場インデックスが年5%で回っているとしたら、それより5%低くなったら、上記の例に従えば個人投資家のリターンは0です。インデックスが4%になると、もうリターンはマイナスです。

結果、行動ファイナンスは我々に以下のことを教えてくれます。

行動ファイナンス理論が個人投資家にもたらした最も大切な教訓は、決して集団自決的な行動に身をゆだねてはいけないということだ。

友人が投資で儲かっているからといって、その口車に乗り、投資してはいけないということです。このアドバイスをFXやグロソブに当てはめると「友人や隣家がFXやグロソブで儲かっているという話を聞いたしても、その集団行動にしたがってはいけない」ということになります。実際にその集団行動に便乗した人の多くは、恐らく円安バブルが崩壊し、損をしたものと思われます。

なんかこれってまるでねずみ講に引っかかってはいけないというような警告のようですね。

ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理

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