日本経済の不況の原因は何か5〜円キャリートレードと円安バブル〜

前回では円安バブルが生まれた原因について述べましたが、その際に円キャリートレードについても触れました。円キャリートレードとは以下のようなものでした。

キャリートレードとは、低金利の円で資金を調達し、外国の高金利の通貨で運用するというものです。例えば、仮に日本が金利1%でアメリカが金利5%の時、日本の円で資金を調達し、アメリカのドルで運用をすれば、利ざやの4%を儲けることできます。

では、この円キャリートレードを行っていたのは誰でしょうか。代表的なのがヘッジファンドです。ヘッジファンドが日本で低金利で資金を調達し、外国の高金利の債券や株、そしてサブプライムローンが組み込まれたRMBSやCDOなどに投資していたのです。

ここでさらに広義に円キャリートレードを捉えると、ヘッジファンド以外にも円キャリートレードを行っていた投資家がいました。ヘッジファンド以外にも円キャリーのメジャープレーヤーなんていたのでしょうか。いたです。しかも物凄く身近に。そう、個人投資家です。日本と海外との金利差を見て個人投資家も、外貨預金やグローバルソブリンなどの外貨建投信で運用していたのです。さらに2006年以降から個人投資家の間でFXが爆発的に流行りだしました。円キャリーが続くと前回書いたように円が売られるので、円安が続きます。すなわち、ヘッジファンドだけでなく、個人の投資家まで円キャリーに投資をし始めたので、まずます円安傾向が強まったいったのです。

そして周りで、FXやグロソブで儲かっている人を見ると、「自分も一儲けするか」と思い、ますます円キャリーが活発になっていくのです。これはまさに「バブル」そのものです。そして、この構図は「ポンジーゲーム」すなわち、「ねずみ講」の状態です。なぜなら、後から円キャリーを行う投資家が増えれば増えるほど、円安は続くからです。

円安バブルの最中、中にはFXで億単位を稼ぎ出す主婦までが現れてきました。(FX投資をする主婦を総じて「ミセスワタナベ」と呼ぶそうです。)さらには、世の中には大儲けした自らのFXの秘伝投資法を書いた本まで出版するような個人投資家まであわられました。

一般の個人投資家が投機取引に乗り出し、その成功が喧伝されるのは、バブルがかなり進行した証拠である。

「バブルの経済学」を書いている野口先生の言葉からの引用ですが、まさにその通りだと思います。サブプライム及びリーマンショックの影響でドル売り及び円キャリーの逆流が進み、2006年の1ドル120円前後から、いまや1ドル90円前後です。FXで大儲けした人たちはどこに行ってしまったのでしょうか。グロソブもご多分に漏れず今回の金融危機の影響で調整が行われているかのような下落ぶりです。

ちなみに金融機関に勤めているせいか「いい株や投信があったら教えて」とたまに聞かれますが、わかるわけがありません。というか私が知っていたら、先に投資しています(笑)私は基本的に投資必勝法なるものを信じていません(Index投資やファンダメンタルズ分析は大事だとは思いますが)。「でも、実際に世の中で大儲けしてる人もいますよ」といわれたならば、私は以下の本を読むことをお薦めします。その名も「まぐれ」。世の中の投資のほとんどは「まぐれ」とばっさり切っています。

この本を読むとFXで儲けた人なんて、まさに「まぐれ」以外の何でもないと感じてしまいます。

<参考文献>