モラトリアムについて考える②

前回の続きでモラトリアムについてです。今回からはモラトリアムのことを踏まえて「そもそも金利とはいったい何か?」について考えてみたいと思います。

実務で働いていると、金利は多くの場合「リスクフリー資産(例えば、国債)やLibor、Tibor、長プラといった基準金利に比べて、対象となる金融商品やローンがどれほどリスクがあるかを表したもの」と考えられることが多いように思われます。(完全なる私見ですが。)

具体的には、ローンや金融商品における元利払いについて、支払いのリスクや不確実性が高い場合には、金利(要求利回り)は高くなり、逆に低い場合には金利は低くなります。

証券化では優先劣後構造を用いることで、金利の支払をリスクに応じて分けています。例えば、支払の確実性が高いシニアはスプレッドが薄く、支払の確実性が低くなるメザニンは、スプレッドが厚くなります。

なお、CMBSでは、シニア部分がさらにAAA、AA、A、BBBなどに細かく分けられて金利が支払われます。そして、AAAの商品はL+30bps、AAはL+50bps、AはL+70bpsという風になります。(L:Libor)この金利と格付けを決めるのが格付け会社です。

なお、リスクが高い場合は金利が高くなり、リスクが低い場合には金利が低くなるということは、期待効用仮説を用いれば数学的にも示すことが出来ます。

金利を「基準金利に比べてどれぐらいリスクがあるかを表したもの」と考えることは実務で働いていると、直感的にもイメージしやすいと思います。ですが、金利の意味はもちろんこれだけではありません。過去多くの経済学者が金利の意味について考えてきました。金利ケインズマルクスといった経済学の巨匠達も取り組んだ経済学の王道の分野でもあります。

次回から金利の経済学的な意味を概観するとともに、金利の機能がモラトリアムによって放棄されるとどのような影響があるかを考えて行きたいと思います。

P.S
厳密には「リスク」と「不確実性」という概念は異なります。リスクは確率分布を想定できるもの、不確実性は確率分布さえ想定出来ない、真に不確実な状況を示しているものとなります。そして後者を「ナイトの不確実性」といいます。詳しくは下記の文献を参考にしてみてください。どちらも抜群の名著です。

日本経済の罠 (日経ビジネス人文庫)

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1997年――世界を変えた金融危機 (朝日新書 74)

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