日本経済の不況の原因は何か10〜カバーなし金利裁定条件は成り立つのか?〜

前回では、カバーなし金利裁定条件について述べました。では、カバーなし金利裁定条件という傾向法則は成り立つのでしょうか。言い換えるならば、「金利が高い通貨ほど、減価する傾向があるのか」ということです。何度も書いていますが、金利が高い国の通貨が増価(買われる)するのではなく、減価する(売られる)という傾向かあるのかということです。

結論からいうと長期的にみた場合には金利が高い通貨は減価しているといえます。例えば、慶応の竹森先生が書いた「世界経済の謎」には以下の事が書かれています。

結論からいえば、このような大まかな予想は長期的には当たっているといえる。例えば、1970年以降、日米金利の関係では、アメリカの金利が日本の金利を上回っている局面が多かったが、これを反映して、日米の為替レートは、1970年はじめの1ドル=300円台から、1997年5月現在の1ドル=110円台まで、円高・ドル安の方向で長期的に推移している。

では、海外ではどうなのでしょうか。再び同書からの引用です。

アメリカとイタリアでは、イタリアの金利のほうが、大体の局面において高かった。これを反映して、イタリア・リラはドルにたいして減価をしている。また、アメリカとドイツとでは、アメリカの金利の方が、大体の局面で高かった。それを反映して、ドルはドイツ・マルクに対して減価している。

続いて、野口先生の「世界経済危機 日本の罪と罰」にも同様のことが書かれています。以下、引用です。

日本が低金利を続けて外国との金利差が拡大すると、円を売って外貨で運用することが有利である。このため、日本から海外への資金雄流れが生じて、円安が発生する。
 ただし、金利差による利益は、本来は将来の為替レートが円高に動くことによって打ち消されるはずである。この関係を示す式を「金利平価式」という。事実、90年台の前半において、ほぼこの式に従って円高が進行した。


上記のように、傾向的には「カバーなし金利裁定式」が働いているといえます。すなわち、金利が高い通貨は将来減価することとなる」という予想はほぼあたることとなります。

ということは傾向的には円キャリートレードなんてもので儲けることは難しいということになります。では、期間を短くすればどうなのでしょうか。短期(ここでの短期とは、10年未満でのスパンというイメージです。)においても金利が高い通貨は減価することとなるのでしょうか。

続きは次回です。

<参考文献>

世界経済の謎―経済学のおもしろさを学ぶ

世界経済の謎―経済学のおもしろさを学ぶ

【コメント】
同書では為替レートの謎やバブル、金融危機などについて当時の最新の経済理論の視点から書かれています。2008年に出版された竹森先生の「資本主義は嫌いですか」で使われている経済理論の多くは、実は10年前に書かれた同書ですでに解説されています(具体的にはミシシッピーバブル、ねずみ講(ポンジーゲーム)、レバレッジなど)。慶応大の小幡先生も「すべての経済はバブルに通じる」の冒頭で「資本主義とはねずみ講である」と書かれていますが、「世界経済の謎」を読めばその意味の理解が深まると思います。住宅バブル、円安バブル、不動産バブルが崩壊した今だからこそ、是非読んでいただきたい一冊です。