【経済学】マンキュー経済学13章 生産費用について①

ミクロ経済学は大きく二つに分けると、「消費の理論」と「生産の理論」に分けられます。これら二つは考え方を含め、互いに表裏いったいとなっています。消費の理論では消費者の行動を分析し、消費者の意思決定行動が需要曲線によって表されることになります。他方、生産の理論では企業の生産行動を分析し(独占や寡占を含む)、企業の生産に関する意思決定が供給曲線に反映されることとなります。

マンキュー経済学13章「The Cost of Production」は生産の理論についての初めの章であり、以降の章で生産者の行動をより具体的に分析していくこととなります。生産の理論(マンキューでは、Firm Behavior and the organaization of industryとしている)のスタートとしてマンキューは、「費用」についての解説を選んでいますが、理由としては、企業が生産量や価格の設定にあたり、費用が重要なカギとなるからとしています。と同時に、本章は非常に退屈な章だとも指摘しています。(This topic is dry and technical.To be honest,one might even call it boring)

本章のポイントは、様々な費用の種類を学ぶことにあります。Explicit Costから始まり、costがつく言葉が9種類も出てきます(Table 3:The many types of Costより)。詳細な説明は本文に譲るとして、様々な費用の中でも、私は特に以下の3つの費用に関する考え方を理解することが重要だと思います。

まず1つ目は、機会費用(opportunity cost)です。経済学者は、企業の生産と価格設定の意思決定について関心を寄せています。企業がこれらの意思決定をするにあたり、費用がどのようにかかるか特に重要になってきますが、経済学的な考えである機会費用は厳密には観察できないため、費用を考えるにあたってはよりいっそう注意を払う必要があります。他方、会計士は経済学者と違い、企業の資金繰りを記録する仕事なので、必ずしも機会費用を意識する必要なありません。この点が経済学的思考の面白い部分だと思います。

2つ目は、限界費用と平均費用です。企業はそれぞれの生産ステージにより例え同じ物を生産する場合でも、コストのかかり方が変わってきます。限界費用の考え方はこのことを捉えるために必要となってきます。「限界」という概念はマンキュー経済学10大原理の一つである「合理的な人々は限界原理に基づいて考える」ですでに説明されていますが、理論で応用されて説明されたのはこの限界費用が初めてだと思われます。以降の企業行動に関する章でも「限界」の考え方がバンバン出てくるので、この章で「限界」という概念を完全に理解することが肝要です。

3つ目は、短期費用と長期費用です。短期では費用は可変費用固定費用に分解できますが、これらの可変と固定という考え方は、時間軸に依存しています。すなわち、短期的には固定費用であっても、長期的には可変費用になるということです。厳密には「すべての費用を可変費用として捉えることが出来る期間」を長期とした方が適切かもしれません。この考え方はマクロ経済学にも応用されています。例えば、短期的には賃金の価格の下方硬直性が存在していても、長期的には存在しなくなるというようにです。

本章は盛りだくさんの内容で同時にテクニカルでもあることから、マンキュー自身が指摘しているようにともすると読んでいて「退屈」に感じるかもしれません。しかしながら、経済学的な思考に触れるにはうってつけです。経済学的思考を学ぶのに、最近は阪大大竹先生の「競争と公平感」やレヴィットの「ヤバイ経済学」といった一般向けの名著がたくさんありますが、本章のような「ど真ん中」の経済学を学ぶことによって、経済学的思考を身につけるのもいいのではないでしょうか。わずか18ページの内容ですが、経済学のエッセンスが非常に詰まっています。

【経済学】マンキュー経済学12章 税の制度設計について

マンキュー経済学12章「税の制度設計」についてのミクロ経済学読み比べです。今回のテーマは「税金」ですが、包括的な経済学の入門書であるマンキュー、クルーグマンスティグリッツでは単独で「税金」もしくはそれに準ずる章が存在する一方で、いわゆるミクロ経済学の専門書では「税金」といった視点で単独の章は存在することはあまりありません。
私が学生時代に経済学を勉強したときを思い出してみても、税金を扱う場合は「マーケットが均衡している状況で税金を課すとどのような変化が起こるのか」といった応用的扱いだったと記憶しています。

税金は経済学においても実体経済においてもとても重要なトピックだと思いますが、日本語の経済学の入門書において税金に関する身近な事例及び税制があまり扱われていないのは残念です(八田先生の本では政策という視点で税金について色々学ぶことは出来ます)。日本の税制を学ぶにあたっては別途税制の専門書を読む必要がありそうです。

なお、勉強会において、平成22年度一般会計予算の概要(歳入及び歳出)の円グラフを参考資料として添付したのですが、その際議論になったことは「国民は税金を取られることには敏感に反応するが、どのように税金が使われているかは鈍感である」ということでした。特に若者は税金による再配分のメリットをそれほど享受していないため、歳出に対してはそれほど気にかけないかもしれませんが、円グラフをみて、いかに社会保障費が多いかということをビジュアルで確認できれば、少しは税に対する意識が変わるかもしれません。

①Mankiw(2008)「Principles of Economics」South-Western Chapter12 The design of tax systems

  • 税の制度設計についての章。制度を把握するにあたってまずアメリカの歳入及び歳出の概要を解説している。
  • 次に税制を効率性と公平性の観点から説明することで、望ましい制度設計を検討している。効率性については8章の内容を一部引用し、公平性については、応益原則と応能原則を解説。
  • 最後に税の制度設計にあたっての効率性と公平性のトレードオフについて言及するとともに、政治的要因についても補足している。政治力が影響してくる税制にあって、マンキューが最後に指摘している「Economist can help us avoid policies that sacrifice efficiency without any benefit in terms of equity」の箇所は非常に重要。


②Krugman,Wells(2009)「Economics second edition」WORTH(邦訳版ではクルーグマンミクロ経済学) Chapter7 TaxesP167〜194 マンキューと同レベル

  • Chapter7「Tax」で税金について扱っている。この章はマンキューの8章と12章を両方をまとめているような体裁をとっている。すなわち、前半では課税することでどのように死荷重が発生するかを、後半では徴税の仕組み(応益原則、応能原則等)や税の効率性と公平性を解説している。
  • 税金はtax base(課税標準額)とtax structure(税率) の2つから構成されている点の説明があり、その後に税金の種類(Income tax,Pay roll taxなど)と特徴を載せている。
  • 通常アメリカ政府は(州単位含む)は応能税を採用したがらない点を指摘している。理由は税が高いと他の州や地域へと人々が移動してしまうからである(インセンティブの問題)。


③Stiglitz,Walsh(2005)「Economics fourth edition」NortonP405〜P 419(邦訳版ではスティグリッツミクロ経済学) Chater17 Public SecotrP381〜P395 マンキューと同レベル

  • Chapter17「Public Sector」において、税の仕組み及びアメリカの税制について記述がある。
  • 税制の五大原則を解説している。 Fairness(公平性)、Efficiency(効率性)、Administraitives Simplicity(事務の簡易性)、Flexibility(柔軟性)、Transparency(透明性)
  • アメリカの所得移転プログラムとして以下を紹介している。 Welfare,Medicaid,Food Stamp,Supplyment security income,Housing assistance なお、スティグリッツにおいては上記は紹介する程度に留まっているが、八田(2009)においては上記につき、経済的効率性、公平性の観点からメリットデメリットをそれぞれ分析をしている。


八田達夫(2009)「ミクロ経済学Ⅱ 効率化と格差是正東洋経済新報社 P461〜P503 初級レベル

  • 税金といった切り口での単独の章は存在しないが、効率性・公平性の視点から様々な点で租税について解説している。
  • 具体的には第13章「労働」では賃金所得税、第14章「生産性要素の総量市場と帰属所得」では地代所得税及び土地の固定資産税、第15章「供給者による自家消費」では売上税(物品税)、家賃所得税帰属家賃税、そして22章「格差是正政策」では累進所得税について記述されている。ほぼすべてにおいてグラフ及び簡単な数式を用いて徴税の効果を分析している。
  • 22章「格差是正政策」においては、個人再分配政策として①累進課税、②使途自由補助金、③使途指定補助金の経済的効果を解説している。上記で言及したスティグリッツの解説をさらに一歩進めて理解するのに役立つ。


⑤Hal Varian(2010)「Intermadeiate MicroEconomics 8th edition」Norton (邦訳版では入門ミクロ経済学)  P22〜P32、P 293〜P313など 初〜中級レベル

  • 税金といった切り口での単独の章は存在しない。税金を課した場合の特殊ケースをいくつかの章で扱っている。
  • Chapter2「Budget Constraint」において、税金が存在する場合、消費者の予算制約がどのように変化するかを説明してる。
  • Chapter16「Equilibrium」では、税が課された場合に需要曲線と供給曲線はどのような変化が起こるかを数式を用いて解説してる。MankiwのChap8の数式解説があるバージョンともいえる。その後課税により発生する死荷重の解説がある。


⑥武隈愼一(1999)「ミクロ経済学 増補版」新世社 P227〜P231 初〜中級レベル

  • 税金といった切り口での単独の章は存在しない。
  • 7章「公共財」において、「市場における課税の効果」を解説している。
  • 解説している内容は従量税、従価税、補助金の3つ。これらが存在する場合、需要曲線と供給曲線はどのように変化するかを効率性の観点から説明している。


⑦西村和雄(1995)「ミクロ経済学入門第2版」岩波書店 P80〜P81 初〜中級レベル

  • 税金といった切り口での単独の章は存在しない。
  • 第4章「消費者行動と需要曲線」において、間接税(税法上の納税者と実際上の租税負担者が異なる税金)を紹介するともに、グラフを用いて消費者にとっては間接税よりも直接税の方が有利(効用が高い)ことを指摘している。

以上

【経済学】マンキュー経済学11章 公共財及び共有資源について

マンキュー経済学第11章では、公共財と共有資源について書かれています。これまでマンキュー経済学で紹介されてきた内容は、主に市場で取引される財についてでした。他方で、必ずしも市場で取引されない財もあります。 例えば、国・地方自治体が提供している公共サービス(一般道路、公園、国防等)です。これらはなぜ国によって提供されるのでしょうか。民間が提供できないものなのでしょうか。これらについて書かれているのが、マンキュー経済学の第11章です。

本章を学ぶにあたり、「公共財」の箇所について代表的なミクロ経済学の教科書の読み比べをしました。詳細は下記をご確認願います。読んでいて特に面白く感じたのが、「公共財」の定義についてです。必ずしも統一的にされているわけではなく、教科書により微妙に定義が異なっていました。

その他、武隈ミクロはやたらとアカデミックな内容だということを思い知らされました。具体例はほぼなく、抽象的な数式と図及びそこから導き出される経済学的なインプリケーションが延々と続きます。アカデミックな内容をやさしく説明しているだけな感じです。学生時代は武隈ミクロをバイブルにして読んでいたのですが、当時私はいったい何をインセンティブに本書を読み続けたのかを今頃になって疑問に感じます。恐らく一言で言ってしまえば「大学院入試のため」だと思われますが。
西村ミクロも多少具体例はあるものの、中級レベルの教科書だけあって、やはり経済学的な効率性の説明を重視して書かれています。
八田ミクロは本当に秀逸です。読み物としても面白いですし、簡単な数式及びグラフでの説明もあるので、経済学的にどのような政策が望ましくまた望ましくないかも直感的にわかるように書かれています。

①Stiglitz,Walsh(2005)「Economics fourth edition」Norton P405〜P 419(邦訳版ではスティグリッツミクロ経済学)

  • 不完全市場(imperfect markets)にて公共財が紹介されている。「公共財」というテーマ単独で章は割かれていない。その他に不完全市場として解説されている内容は「不完全競争」「不完全情報」「外部性」の4つ。
  • 限界費用がほぼゼロ」という視点で公共財を説明している(The marginal cost of providing a pure public goods to an additional person are strictly zero,and it is impossible to exclude people from recieving the good)
  • フリーライダー」が存在するため、民間市場(Private Market)では、公共財の供給が少なくなることを指摘。 →直接は言及はしていないが、このことが発生するのは原理的には外部性が存在するためである。


②Krugman,Wells(2009)「Economics second edition」WORTH P433〜454(邦訳版ではクルーグマンミクロ経済学) マンキューと同レベル

  • マンキュー経済学と同じく「Public Goods and Common Resources」という章で公共財及び共有地の悲劇を扱っている。
  • 公共財の定義もマンキューとほぼ同じ。クルーグマンミクロでは以下の4つの分類を行っている。
    • Private goods(rival in consumption,excludable)
    • Public goods(nonrival in cosumption,non excludable)
    • Common resources(rival in consumption,non excludable)
    • Artificially scarce goods(rival in consumption,non excludable)
  • マンキューではArtificially scarce goodsの解説が少ないが、クルーグマンでは充実している。その他「限界(Marginal)」の概念を用いて、最適な公共財の供給及び経済厚生についての解説もあり。

 
八田達夫(2009)「ミクロ経済学Ⅰ市場の失敗と政府の失敗への対策」東洋経済新報社 P349〜P381  初級レベル

  • 非競合性を「『規模の経済』が極端な財」として説明している。 なお、資源投入を一定に保ったまま、使用者を増やすことが可能な性質を持つ財・サービスを非競合財としている。
  • 本書で言及されている公共財の定義3種類。
    • 「無料で提供される非競合財」(無料がポイント)
    • 「排除不可能な非競合財」(大半の教科書の説明)
    • 「外部経済効果を複数の受益者に対して引き起こしている財」(公共財の分析が本格的に始まった1950年代のサミュエルソンの論文では、上記外部性による定義に極めて近い定義を用いている。)
  • 費用便益分析を用いて、「道路無料公開の原則」を説明している。高速道路の有料・無料についてもミクロ経済学の視点から詳細に分析している。


④武隈愼一(1999)「ミクロ経済学 増補版」新世社 P232〜P242 初〜中級レベル

  • サミュエルソン条件(公共財の供給がパレート最適な状態であるならば、個人の限界代替率の和は限界変形率に等しい。)についての説明あり。
  • リンダ−ルメカニズム(政府が人々の嗜好を取り入れて公共財の供給量とその費用分担を決定させる方法であり、政府に市場機構の役割を担わせる方法)についての説明あり。→「利益が得る人が負担をする」という受益者負担の原理ともいえる。
  • リンダールメカニズムの限界として、フリーライダーが紹介されている。


⑤西村和雄(1995)「ミクロ経済学入門第2版」岩波書店 P294〜P301 初〜中級レベル

  • 公共財を外部効果の特殊ケースであるという立場で純公共財(消費が非競合的でかつ、供給が非排除性を持つ財)を、分析している(数式あり)。
  • 公共財が存在する場合のパレート効率性の条件が示されている。(私的財は一定の価格に対する需要量の「水平和」を社会的需要曲線とする一方、公共財は一定量の財に対する限界評価の「垂直和」を社会的需要曲線とすることになる。)
  • 公共財の場合、市場を通じてはパレート効率的な配分が補償されないため、外部効果と同様に自主的交渉もしくは政府の介入が必要になる。しかしながら、実際の最適供給量を把握することは困難で、公共財は政治的な解決がなされやすいことを指摘している。 →ちなみに、八田ミクロでは、そのことを踏まえ、政治的プロセスがどのようになされたかをさらに踏み込んで分析している。


⑥Hal Varian(2010)「Intermadeiate MicroEconomics 8th edition」Norton P645〜P665(邦訳版では入門ミクロ経済学) 初級から中級レベル

  • 「最適な公共財の供給はどのようにしてなされるか」を中心に解説されている(数式の展開あり)。公共財の定義は「a good that must be provided in the same amount to all the affected consumers」となっており、公共財を消費外部性(consumption externalities)の特殊例として扱っている。
  • 公共財の供給に際して発生する「フリーライド問題」を、ゲームマトリックスを使い説明するとともに、一見すると似ている「囚人のジレンマ」との相違点を説明している。
  • VCGメカニズム(真の評価値を申告することが最適な戦略(支配戦略)になることを保証する組み合わせ)についての解説及び問題点が書かれている。

以上

【経済学】マンキュー経済学第10章「外部性」について

マンキュー経済学10章のテーマである外部性についてです。マンキュー以外のミクロ経済学のメジャーどころの教科書を読み比べました。ざっとまとめましたので、ご参考にしていただければと思います。難易度順に並べています。

①Stiglitz,Walsh(2005)「Economics fourth edition」NortonP405〜P 419(邦訳版ではスティグリッツミクロ経済学) マンキューと同レベル

  • Chapter18で「Environmental Economics」(環境経済学)として外部性を扱っている。
  • スティグリッツらしく環境問題について経済学の分析を応用している。
  • 政府がどのように介入すれば環境問題を解決できるかの具体例が非常に豊富。


②Krugman,Wells(2009)「Economics second edition」WORTHP433〜454(邦訳版ではクルーグマンミクロ経済学) マンキューと同レベル

  • 限界(marginal)の概念を用いて外部性のコストベネフィットを説明している。
  • Network externalitiesの説明が非常に充実している。
  • positive feed backの解説もあり。


八田達夫(2009)「ミクロ経済学Ⅰ市場の失敗と政府の失敗への対策」東洋経済新報社P239〜P277  初級レベル

  • 自由放任と政府介入の違いについての視点から外部性を分析している。
  • 外部性に対する対策としての数量規制とピグー税それぞれの効果の違いをグラフを用いて分析している。
  • 規模の経済、産業の集積の利益、ネットワーク外部性、商品規格など外部性の応用例が豊富。


④武隈愼一(1999)「ミクロ経済学 増補版」新世社 P242〜P249 初〜中級レベル

  • 公共経済の一分野として取り扱っている。具体例があまりないため、外部性に割いているページは少ない。
  • バンドワゴン効果(流行を追いかける現象)、スノップ効果(人とは違う特別なものを消費することを好むこと)、ヴェブレン効果(より高価なものを好む現象。価格が上昇するとかえって重要が増大することがある)について記述あり。
  • 「企業間に外部性が存在しても、もし企業間の交渉に取引費用が一切かからなければ、効率的な資源配分が達成される」ことを数式で説明している。また「効率的」かどうかに重点をおいて説明している。


⑤西村和雄(1995)「ミクロ経済学入門第2版」岩波書店 P285〜P294 初〜中級レベル

  • 市場の失敗のひとつして外部性を扱っている。
  • 外部性を一般均衡分析の視点からも分析している。数式での説明もあり。
  • 公共財(非競合性と非排除性の性格を持つもの)を外部効果の特殊ケースとして説明している。


⑥Hal Varian(2010)「Intermadeiate MicroEconomics 8th edition」Norton P645〜P665(邦訳版では入門ミクロ経済学)  初級から中級レベル

  • 数式での分析が非常に充実してる。
  • 外部性を「consumption externalities」と「production externalities」の二つの視点から分析している。
  • 共有地の悲劇」について外部性を用いた解説がある。

以上

【経済学】マンキュー経済学勉強会その後

1年ほど前にマンキュー経済学を読む勉強会を立ち上げたことを書きましたが、その勉強会が本日で無事1周年を迎えました。これまで学んできたことを今後は本ブログでも共有して行きたいと考えております。
引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。

【読書日記13】生命保険のカラクリ

本日はライフネット生命副社長の岩瀬大輔さんによる「生保のカラクリ」をご紹介します。

生命保険のカラクリ (文春新書)

生命保険のカラクリ (文春新書)

著者の岩瀬さんについては以前もご紹介したので、こちらをご参照願います。

生命保険は日本人にとっては非常になじみのある金融商品である一方で、その実態は一般人にはあまりよく把握されていません。保険で集められたお金はどのように運用されているのか、予定利率はどのように決定・達成されているのか、結局のどの保険が得なのか、など保険にかかわる謎は非常に多いです。

私が勤めている会社にも生保レディが保険の勧誘をしに来ているのですが、正直毎回プランを見せられてもそれが得なのそして本当に必要なのか何回聞いてもわかりませんでした。しかし、この本を読んだことで生保の仕組みがわかり、自分にあった保険はいったいどういうものが自分で考えることが出来るようになりました。

本書では、司法試験、外資系コンサル、外資系ファンド、ハーバードMBA、ネット生保設立というキャリアを歩んできた、理論にも実務にも長けている岩瀬大輔さんが、複雑な保険のカラクリを非常に丁寧に解説しています。また岩瀬さんご自身もネット生保を立ち上げるに際して、ゼロから保険を勉強したいうこともあって、生保のフレームワークをご自身の言葉で解釈し直し、一般人でも知識ゼロから生保のカラクリをわかるように書かれています。

複雑な生保の仕組みをここですべて解説することはできませんが、生保の仕組みを理解するに際して少なくとも以下のことは押さえておくべきです。

現代の生命保険は「保障」と「貯蓄」というまったく異なる二つの機能を内包している。

「保障」は契約者からお金を集めてプールし、事故などが起きたときに、プールしたお金から保険金を支払うというものです。ということは、仮に保険料を支払った契約者が将来的に事故にあわなくなったとしても、それは必ずしも無駄金になっているわけではなく、きちんと事故にあった人に支払われて、有効に使われているのです。

一般的には「保険料が掛け捨てになるのは損」と考えられてます。しかしながら、保険のそもそもの機能を考えれば、決して掛け捨ては損ではなく、むしろ保険の本質的な役割といえます。

一方、もう一つの「貯蓄」はどうでしょうか。「貯蓄」は満期時に受け取る保険満期金や、解約したときに戻ってくる返戻金などがあります。「保障」の説明をしたすぐ後なので、わかりやすいと思いますが、この「貯蓄」という機能は別に保険会社でなくとも提供することが出来ます。銀行や証券会社で金融商品を買えば代替できる機能なのです。

ですが「せっかく支払った保険料が一円も戻ってこないのは悲しい」という感情論に走ると、保険特有の本来の機能ではない「貯蓄」にも目がいき、「60歳になったら500万円支払われる」といった養老保険を購入してしまいがちです。出来上がりの利回りもよくわからず、満期になったら自分が払い込んだ保険料のいくらかもらえるだけで得と感じてしまうのは、日本人が保険のカラクリをきちんと理解する機会がなかったからだといえます。

上記以外にも、「定期死亡保険のコスト構造」、「保険会社をゼロから作るとどうなるか」、「大手生保と外資系生保の保険料収入の推移」、「保険にかしこく入るための7か条」など目からうろこの内容が満載です。

私自身数これまで多くの生保レディの勧誘を受けてきたにもかかわらず保険の知識はまったく身につきませんでした、この1冊を読むことで保険に関する疑問はほぼすべて解消されました。機関投資家としての生保の金融における役割をしるためにも、また人生でマイホームの次に大きな買い物といわれる保険の加入を決めるためにも、本書は間違いなく有益な一冊です。

経済学者アンケート 経済政策はどうあるべきか

米国の33代大統領ハリー・トルーマンはかつて以下の言葉を発しました。

隻腕の(one-armed)経済学者を見つけたい。

トルーマンがブレーンの経済学者たちに助言を求めると、経済学者たちはいつも次のように答えたからです。

一方では(on the one hand)・・・ですが、他方では(on the other hand)・・・となります。

財政政策は実施すべきか、金融政策は継続すべきか、消費税は上げるべきかなど、経済者達の意見はいつも異なります。では、総体として経済学者達は今の経済状況をどのようにえているのでしょうか。

10月16日の日経経済教室では、日本経済学会に所属している経済学者を対象とした経済学者アンケートの回答が掲載されていました。以下サマリーです。

■経済学者が考える政策の方向

  • 財政政策
    • 必要な分野に絞って拡大すべき 約60%
    • 拡大すべきではない 約23%

  • 日銀の金融政策
    • 出口戦略」を考慮すべき 約40%
    • 現行の緩和政策のままでよい 約37%
    • より一層の緩和が必要 約15%

  • 今後の消費税率
    • あげるべき          約70%
    • 現状維持を          約15%

  • 最終的な消費税率
    • 6%以上10%未満        約19%
    • 10%以上15%未満       約50%
    • 15%以上20%未満         約22%

  • 現在の世界経済危機は何年に一度の危機と見ているか。
    • 30年に一度           約23%
    • 50年に一度           約20%
    • 100年に一度/過去に経験したことがない 約15%         

  • 危機克服にどの程度の時間がかかるか
    • 世界経済 全治2〜3年 52%
    • 日本経済 全治2〜3年 45%


上記は日経のアンケートによるものですが、一般的な経済政策についてはどうすべき(どうあるべき)と経済学者は考えているのでしょうか。

経済学者の個別具体的な意見は多くの場合分かれますが、基本的な考え方にはだいたいのコンセンサスがあります。例えば、政策提言と経済学者の賛同率については以下のような結果が出ています。

  1. 家賃の上限規制は住宅供給の量・質ともに低下させる。93%
  2. 関税と輸入割り当ては一般的な経済厚生を低下させる。93%
  3. 変動為替相場制度は有効な国際通貨制度である。  90%
  4. 完全雇用状態の経済では、財政政策(減税や財政支出拡大)には顕著な景気刺激効果がある。90%
  5. 連邦予算を均衡させるためには、毎年の値ではなく景気循環を通じての値を均衡させるべきである。85%
  6. 生活扶助受給者への現金給付は、同額の現物給付よりも受給者の厚生を高める。84%
  7. 巨額の財政赤字は経済に悪影響をもたらす。83%
  8. 最低賃金の引き上げは、若年労働者と未熟練労働者の失業率を引き上げる。79%
  9. 政府は社会福祉制度を「負の所得税」形式に変革すべきである。79%
  10. 環境汚染規制のアプローチとしては、排出税や売買可能な排出権のほうが、総量規制の導入よりもすぐれている。78%


個人的には、1,2,7,8が興味深かったです。
なお、上記は世界中の大学で使われている経済学の教科書である「マンキュー経済学」に記載されています。

マンキュー経済学〈1〉ミクロ編

マンキュー経済学〈1〉ミクロ編

マンキュー経済学〈2〉マクロ編

マンキュー経済学〈2〉マクロ編

こちらは上記の原書版です。

Principles of Economics (Available Titles Coursemate)

Principles of Economics (Available Titles Coursemate)


上記の内容は最近発売された元グーグル副社長の村上さんが書いた以下の本でも引用されていました。
村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則

村上式シンプル仕事術―厳しい時代を生き抜く14の原理原則


以上、経済学者アンケートについてでした。

P.S
マンキュー経済学書の原書を2年ぐらいかけてすべてを輪読する勉強会を実施する予定です。ご興味のある方は、「マンキュー経済学勉強会」のコミュニティがあるのでミクシーで登録してみてください。