「東大・林教授、一橋大学に 異例の移籍」を考える。 Appendix
東大林先生の業績について簡単にまとめました。
①トービンのQ
投資のトービンのQの理論において、限界のQと平均のQがある仮定の下では、一致することを林先生は数学的に証明しました。このおかげでトービンのQを用いた実証分析が可能となりました。投資関数の研究では、多くの場合Hayashi(1982)が引用されています。修士1年の時に本論文を読みましたが(というか授業で読まされました)、あまりに綺麗な数学的な証明で感銘をうけたのを今でも覚えています。
伝説的なこの論文“Tobin's Marginal q and Average q : A Neoclassical. Interpretation”のリンクはこちらです。
②プレスコットとの共著論文
最近では、2004年にノーベル経済学賞を受賞したプレスコットととの共著論文である"The 1990s inJapan: A Lost Decade"が非常に有名です。この論文でHayashi Prescottは、日本のバブル崩壊後の長期停滞の原因は需要不足にあるのではなく、供給サイドにあることを指摘していました。
簡単に説明すると、日本の長期停滞の原因は需要と供給の裏側にある技術革新(TFP)の停滞によるものだということです。Hayashi Prescott(2002)はこちらに掲載されています。
また本論文は、例えば以下の本で易しく解説されています。
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あと、Hayashi Prescott(2002)は池田信夫氏のブログでよく引用されています。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/82e37ae447724f8268cbc6784dc0b9fd
http://210.165.9.64/ikedanobuo/d/20090302
③計量経済学のテキスト
林先生がグローバルで使われる大学院レベルの計量経済学のテキストを書いていることも特筆すべきことです。大学院レベルの計量経済学といえば、HayashiのEconometricsかGreenのEconometric Analysisかといわれるぐらい定番で使われます。日本人が書いた教科書が、世界中の大学院でスタンダードとなっていることは極めて異例ではないでしょうか。このHayashiのEconometricsの特徴は、数ある計量経済学の手法をGMMという視点から体系的にまとめたという点にあります。
私は修士1年の後期に後者のEconometric Analysisで計量経済学を学びましたが、東大では林先生が直々に修士1年の前期からEconometricsを使って講義をするようです。林先生の授業は一発目からOLSをGMMを使って説明するそうなのですが、繰り返しになりますが、院入学時の私のような計量経済学の素養がない人は初回から即死すること必至だと思います…。ちなみに林先生によるEconometricsの解説ページはこちらです。問題の解答や実証分析で使われたデータがUpされていて非常に重
テキストは以下の通りです。
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④林先生の厳しさ
「私が書く米欧の大学院向けの推薦状について」を読めば、林先生がいかに厳しいかがわかります。厳しい中にも、林先生の優しさが見える最後の補足はちょっと泣けます。